- (有)岡本シンホウ産業のHOME・熊本地震の復旧工事と地震対策、瓦屋根の耐震工法とガイドライン工法について >
- 熊本震災後の梅雨と台風に向けたブルーシート養生対策や長期間のシート養生を可能にする材料選びと方法
熊本震災での屋根のシート養生の長期化を視野に入れて
平成28年4月14日、16日未明に発生した熊本地震での建物の被害は甚大でした。
屋根工事に関することだけでも、セメント瓦全般、一段棟瓦、南蛮漆喰等の材料不足、職人の人手不足も深刻で、
通常でも手の掛かる瓦の棟部の工事では、更に手の掛かる耐震工法による施工をする必要があり、
一軒一軒の工事に時間を要し工事期間も長くなっていました。
熊本は高温多湿の地域であり、梅雨や台風シーズンにシート養生で過ごすには過酷な地域といえますが、
その状況の中で応急処置での長期間のシート養生が必要でした。
これからお話しする震災後の家を守るために必要な対策と準備、
シート養生の知識を備える事で皆様にお役立て頂ければ幸いに存じます。
熊本震災でのシート養生の大敵は、梅雨ではなく台風
熊本地震の影響を受け被災し、被害が多かったのが瓦屋根の棟瓦という部分になります。
この棟瓦は屋根の天辺に位置し、屋根瓦のフタのような役割をしています。
このフタである棟瓦がないという事は、屋根が非常に不安定な状態で維持されているという事です。
雨漏りが心配で梅雨対策としてシート養生をされている方も多くいらっしゃいましたが
棟瓦を失い不安定な状態にある屋根の大敵は大風であり、
一番に目を向けなくてはいけないのが台風対策でした。
シート養生である程度の雨漏りは防ぐことが出来ますが、台風が直撃するような事があれば、
大多数のシートが風に煽られて飛んでしまう可能性があります。
シートを失えば、固定されていない他の瓦にも被害を拡大させてしまう可能性が非常に高いのです。
この事も踏まえた上で、シート養生での梅雨対策、台風対策について考えていただきたい思います。
長期間のシート養生を可能にする
工夫と材料選びについて
熊本震災後、役場からブルーシートが配布されました。
このブルーシートでの屋根の養生は、あくまでも応急処置としてのシート養生であり、
雨漏りを一時的に防ぐだけに過ぎません。
ですが、屋根の養生に使用する材料や、シート養生の仕方によっては梅雨や台風への対策になり、
長期間のシート養生も可能になってきますので参考にしていただけたらと思います。
◯劣化した養生シートや土嚢袋、組紐を使い続けるのは危険です◯
シート養生の仕方を説明する前に、劣化したシートや土嚢袋を使い続ける事の危険性についてお話したいと思います。
ほとんどの方がシート養生で使用されていたブルーシートですが、ビニール製で風・直射日光に弱い為、
薄手のシートになると1ヶ月もするとボロボロになってしまいます。
厚手のブルーシートでも3ヶ月も経過すると薄くなり劣化してきます。
重しとして使用する土嚢袋も直射日光や水に弱く、繰り返し日光に浴びるとブルーシート同様にすぐ劣化してしまい、
ブルーシートが飛ばされないように抑えるという役目を果たさなくなります。
ブルーシートや土嚢袋を引かせている組紐も同様です。
この様に劣化したブルーシートや土嚢袋、組紐を使用し続けると、ブルーシートが破けて雨漏りの原因となり、
土嚢袋も破けて中身が出てしまう事で軽くなり抑えていたシートか飛ばされてしまったり、 組紐が切れて土嚢袋が落下したりと危険です。
また、ブルーシートの上に重しの代わりとしてガレキをそのまま乗せている家をよくお見かけしますが、
瓦礫は土嚢袋のようにシートが飛ばされない為の重しとしての役割を果たしません。
強風時にはシートが風に煽られてガレキが落下する事もありますので、注意する必要があります。
◯養生シート選び◯
屋根の被害が棟部だけの場合には、シートを折り重ね、棟部だけを養生する為、ブルーシート使用でも劣化は少なくなります。
屋根の被害が広範囲にわたり、全体的にシート養生をする必要がある場合には、価格は高めになりますが、
厚手の防炎シートなどが適しています。
ブルーシートに比べ耐久性もあり、正しい方法でシート養生を行えば破れる心配もなく、長期的なシート養生が可能となってきます。
◯土嚢袋の種類と作り方◯
土嚢袋にもいくつか種類があります。
通常販売されている土嚢袋だと1ヶ月から、2ヶ月程しか保ちません。
その為、土嚢袋を2枚重ねにし耐久性を上げることをお勧めします。
農業用の肥料袋を土嚢袋の代わりとして使用する場合には、
口をしっかりと絞って雨水が入らないようにすると長持ちすると思いますが、夏場の直射日光にはやはり弱いかと思います。
他にも耐候性のUV吸収剤入りのポリエチレン袋があります。
通称黒土のうと呼ばれ、
紫外線に強くシート養生の重しとして屋根の上で使用するのには最適な土嚢袋です。
土嚢袋に入れる材料と容量について、土嚢に入れる中身の量は材料で若干違ってきますが、
だいたい5割から6割(10kから20k)程度で詰めて下さい。
中身が多すぎると破れやすく、重たい土嚢袋を持って屋根に上がるのに危険を伴います。
また軽すぎると土嚢としての重しの役割をはたしません。
重たい土嚢を少し置くより、半分程度まで詰めた軽めの土嚢をバランスよく数多く置いた方が良いと思います。
但し、土嚢の数を増やすと土嚢が劣化してきた時に早めの対応が必要となってきます。
中に入れる材料ですが、瓦礫や砕石は角が擦れる事で土嚢袋が破れやすくなり、砂や土は水分を保水しやすく土嚢袋の劣化に繋がります。
土嚢袋を作る際には、中に入れる材料よりも土嚢袋の2枚重ね等の工夫が重要になってきます。
UV吸収剤入りの黒土嚢袋を使用する場合でも、一般的に販売されている土嚢袋の上から黒土嚢袋を被せ2枚重ねにする事をお勧めします。
それでもシート養生から3ヶ月も経過すれば、点検が必要になってきます。
土嚢袋の表面が破けてきたりと劣化が見られる場合には、新しい土嚢袋を上から更に被せるなどの対応が必要となってきます。
最後に土嚢袋や養生シートを引かせる為に使用する組紐ですが、農業用ハウスバンドが耐久性もあり、
シート養生を行うのに適していると思います。
梅雨や台風に向けてのシート養生対策
シート養生をする際の注意点
シート養生をする際に特に注意していただきたいのが、ズレて落ちそうになっている瓦や割れてしまった瓦等の瓦礫(がれき)です。
この瓦礫が屋根の上に残った状態で、養生ブルーシートを掛けないように注意して下さい。
瓦礫が残った状態で養生をしてしまうと、風の影響でガレキの角とシートが擦れてしまい、
どんな厚手のシートでも1ヶ月も経てば穴が開いてしまいます。
又、シートだけではなく、2階部に棟や隅棟の瓦が引っかかっている場合には、下の瓦を割ったりと2次災害を引き起こす場合もあります。
最悪の場合、瓦礫が落下し人に当たってしまう事故の要因にも繋がり大変危険です。
もし2階部に瓦礫を残したままシート養生をしてしまったという方は、晴れの日が2日間程度続く時にシートを剥ぎ、
破損した瓦を降ろし2次被害や危険を取り除いていただきたいと思います。
◯棟瓦だけが破損している場合のシート養生◯
厚手のブルーシートを50cmから1m程度の幅に折りたたみ棟部に敷きます。その際、袖の部分も巻き込んでしっかりと固定します。
次に、土嚢袋を2つ結びつけ棟部にまたがらせて下さい。
この要領で結びつけた土嚢袋を、50㎝ぐらいの幅を開けながら棟部全体に設置していくと、
ある程度の台風がきてもシートが飛ばされる危険は防げると思います。
シートの中に風を入れない様にする工夫が、養生をする上で大事な部分になります。
◯屋根全体が破損してしまっている場合のシート養生◯
屋根全体が破損してしまった場合には、後々瓦変え(葺き替え)を視野に考えておられる方が多いと思います。
葺き替え工事を前提とした場合のシート養生では、全部の瓦を剥ぎ取っての養生方法もあります。 土嚢袋が均等にバランスよく敷き詰められ、養生シートで軒先とケラバ部まで巻き込み固定してある為、
上手く風の入りを防いであります。シートを複数枚使用されている場合には、このように養生シートの継ぎ目に土嚢袋を設置し、
しっかりと固定され雨や風の入りを防ぐ事ができます。 養生シートを折りたたみ、シート幅を最小限にし土嚢袋でしっかりと固定する事で風の入りを防いであります。
緑色の養生シートは耐候シートになります。ブルーシートの上から耐候シートを掛け2重張りにし、
土嚢袋でシートの下側をしっかりと抑えてあります。
こちらは緑色の耐候シートと黒色の耐候土嚢袋を使用した長期間のシート養生に適した組み合わせです。
全部の瓦を剥ぎ、野地板全体に養生シートを張り、野地板と養生シートの間に風が入らないように板を密着させます。
その際、軒先やケラバ(袖瓦)部から風が入り込まない様に、軒先やケラバ部も養生シートで巻き込んで板で固定します。
瓦工事の目処が立たない場合や、1年から2年の長期で待つ必要がある場合には、シートを2重張りするのも有効でしょう。
またコストは掛かりますが耐候性シートを屋根の形状に作ってもらう事も強くお勧めしています。
シート養生の方法を説明してきましたが、屋根全体をシートで包み込む必要がある程の被害に遭われた方は、危険な作業は避け、
瓦業者に相談していただきたいと思います。